魚沼発の木工製品を、新しい地域のブランドに

さまざまな人との出会いや縁に導かれ、魚沼で暮らすことになった中川さん。豊かな森の恵を生かした木工製品が、地域の新たなブランドとして全国に発信される日を目指して、一歩一歩着実に歩みを進めています。

 

中川光嗣さん(小屋丸 代表)

 

INDEX

 

中川 光嗣さん

 

海辺の町から山里へ。縁を取り持ったのは木でした

雪国生まれのブナ、スノービーチを活用する「スノービーチプロジェクト」の拠点のひとつにもなっている大白川木工センター。中川光嗣(なかがわみつつぐ)さんがここをベースに活動するようになったのは2016年のこと。東京で生まれ、幼少から成人になるまで神奈川県の湘南地域で過ごした中川さんが、山深い魚沼で暮らすことになるとは、本人も想像していなかったことでしょう。さまざまな縁に導かれ、現在は地元産のブナや杉を使った商品開発に取り組んでいます。

大学で建築を学び、首都圏の建築事務所などで住宅建築や都市設計などに関わってきた中川さんが30代になった頃、内閣府の主催するプロジェクトに参加し、インターン研修で新潟へ訪れました。その後、大学時代に何度か訪れた大地の芸術祭で見知っていた十日町市に地域おこし協力隊として移住。地域の要望に応じて米作りや雪下ろし、道路整備などの手伝いをしているうち、地域の人たちが伝統的に森と関わってきたことを知り、森林整備の仕事を手掛けるように。下草刈り、間伐や除伐などの作業に携わる中で、林業従事者の減少で森の手入れや木材の活用が十分に行われていない地域の現状を身をもって体験しました。「そこからですね。木を使っていきたい、地元の木をもっと活用していく活動ができないかと思い始めたのは」。

魚沼市に移住する切っ掛けも木が取り持つ縁でした。県が主催した木材関係の会合で魚沼市の関係者と知り合い、地元の木を使った事業に誘われ参加することになったのです。

 

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

 

 

木工を始めて、改めて知った木の魅力

活動拠点は大白川木工センター、求められた内容は地元の木を使った木工製品などの商品開発とそのPR。中川さんにとっては、希望していた仕事ができるオファーでした。「ただ、十日町で森林整備の経験をしましたが、木工は全くの素人。スノービーチプロジェクトに関わる方から教えてもらうなどして、技術は今も研鑽中です」。商品のアイデアを考え、試作を繰り返すかたわら、生活道具やベンチなど、地元の方や施設に依頼された仕事も行っています。「木工を始めてみて、それ自体がおもしろいこともありますが、改めて木の魅力に引き込まれています」。

商品開発の主な素材は、魚沼の木材の特長を表したスノービーチ(ブナ)と根曲がり杉。面積の80%が森林という魚沼市にあって、豊富な資源として以前から活用が求められていたものです。「ブナは緻密な材質で硬く、手触りもいいですよね。木目がおとなしいのでいろんなデザインに対応できますし、白い木肌は清潔感が感じられると思います。その上曲げ加工に強いので、イスなどの家具やおもちゃなどにもよく使われています。根曲がり杉は雪国の特徴を一番反映している素材。雪の重みに耐えて大きく曲がったことで、木目が複雑でおもしろく、とても個性的です」。

 

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

 

写真

  1. 雪の重さで曲がった根曲がり杉。
  2. 根曲がり杉の年輪は、細い年と太い年の木目が複雑で表情が豊か。一般的な杉に比べて色が濃いのも特徴です。
  3. 雪国のブナ、スノービーチです。

 

 

自然が作り出した素材の持ち味を製品に生かす

中川さんにこれまでに作った製品の一部を見せてもらいました。「試作品ですが、このスツールは一つは桐とナラ、もうひとつはブナだけで作ったものです」。スツールの足の部分を見ると、不思議な模様が入っています。「スポルテッドといいますが、木に菌が入り込んだことでできた模様です」。白いブナの中に不規則に描かれた黒いすじ模様。時として自然は、人為的には絶対に作れない、とても味わい深いデザインを与えてくれます。試しに座らせてもらうと、ブナの滑らかな木肌とどっしりとした質感が感じられ、安定した座り心地の良さに驚きます。

「これはオーダーで作ったプレートです。ブナを貼り合わせて作りました」。スポルテッドのブナを組み合わせ、墨流しのような、大理石のような表情を作り出しています。ほかにも雪国独特の木製除雪スコップ「コスキ」をモチーフにしたスプーン、越後ハーブ公園の下家なども手掛けたそうです。「でも、技術も勉強中ですし、商品開発も道半ばです」。

 

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

 

写真

  1. 木に菌が入り込んで黒くすじ模様になったスポルテッドのブナ角材。
  2. (上)スポルテッドのブナ材で作ったしゃもじ。(下)ブナ材のバターナイフ
  3. ブナ材で作ったカッティングボード。
  4. スノービーチプロジェクトで作ったブナ材のスピーカー。

 

 

作りたいものは、雪国の特徴を生かした小屋

中川さんには取り組みたいことがあります。「一番やりたいと思っているのは、小屋造り。住宅とは別に自分の拠点を設けて趣味を楽しんだり、アウトドアで楽しんだり、キャンプ場とかクラインガルテン(賃貸型農園)で設置してもらうとか。そうした小屋を造っていきたいと思っています」。その実現のために研修会にも参加。「板倉構法という、昔の神社などに使われていた構法を応用したもので、復興住宅などにも使われているんすよ」。柱に彫った溝に杉の厚板を落とし込んで壁を作り建てる構法で、国産杉の活用も兼ねて普及を進めているのだそうです。
「最近はDIYを楽しむ人が増えていますし、施主さんと一緒に作業してもらって造る過程をSNSで発信したり、体験イベントを行ったりして広めていきたいですね」。

小屋の実例はまだないですが、小出にある子育ての駅かたっくりの中に似たような遊具を地元の工務店と一緒に造ったといいます。「デザインがちょっと変わっていて、この辺りでよく見かけるカマボコ型の小屋の形を取り入れてみたんです。同じ小屋を造るにしても、雪国の特徴を生かしたようなデザインも考えていけたらいいなと思っています」。

 

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

 

写真

  1. 雪の重さで曲がった根曲がり杉。
  2. 根曲がり杉の年輪は、細い年と太い年の木目が複雑で表情が豊か。一般的な杉に比べて色が濃いのも特徴です。
  3. 雪国のブナ、スノービーチです。

 

 

自前のブランドを立ち上げ、新たなスタートラインに

昔は薪として、炭の材料として地域の貴重な資源だったブナ。根曲がり杉もその個性的な形を生かして家の梁(はり)などに使われていました。時代の変化と共に燃料はガスや電気に、建築用の木材も安価な海外産に押され、魚沼の林業も先細りの状態に。しかし、使う場が増えれば、また新たな価値を与えられて需要が増えれば、森の手入れも行き届き、かつてのように自然を生かし、生かされる暮らしが営まれるようになるはずです。

2019年、中川さんは個人事業主として独立して屋号を「小屋丸」と命名、ヤマネとブナの葉をモチーフとしたロゴマークも作り、新たな一歩を踏み出しました。小屋丸ブランドの商品が、地域の枠を超え、全国に発信される日を目指して日々商品開発に取り組んでいます。

 

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

中川 光嗣さん

 

写真

1. 2. スポルテッドのブナ材で作ったキャンドルスタンド
3. 柏崎のデザイナーに作ってもらった小屋丸のロゴ。
4. ブナ材で作ったオリジナルフォトフレーム。

 

 

小屋丸
住所:〒946-0303 新潟県魚沼市大白川170-1

E-mail: nerkariver@gmail.com