自然に寄り添う気持ちを大切に、魚沼の草木を生かしたリース作り

「自分を表現したい」と、いつも何かに夢中になって歩んできた山本さん。その過程で出会ったリースは、ふるさとの温かさと自然に触れてより豊かな作品に、そして自身にとってもより大切なものになりました。

 

山本 規子さん(アトリエひと葉 代表)

 

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山本

 

自分らしく暮らせる魚沼で、リース作りを本格スタート

11年前に帰郷し「アトリエひと葉」を設立、リース作家として活動する山本さんが、リースと出会ったのは30代後半の頃でした。「自分で何かを表現したい」。そんな思いを高校時代に抱いた山本さんは、卒業後に東京へ。最初に目標とした事は達せられませんでしたが、興味を持ったことには常に夢中で取り組みました。

リースと出会った時も「スイッチが入っちゃって」、と山本さん。長女を出産し、子育てのさなか「外へ出たい、何かしたい」気持ちがむずむずと動き出し、たまたま見つけた子ども同伴で通えるフラワーアレンジメント教室へ。そこで「趣味で楽しむのもいいけど、仕事にもできるわよ」と先生に言われた一言で“夢中モード”全開に。スーパーの花屋でアルバイトをしながらフラワースクールへ通い、リース作家への道を歩み始めます。

ただ、そのまま東京で仕事をしようとは考えなかったと言います。「東京はもういいやって思ったの」。里帰りをした折、近所の人たちが昔と同じように声をかけ、温かく接してくれる。「うわべだけの付き合いをしていたような」東京にいる時の自分と比べて、魚沼では自分が素に戻ったように思えたことが、魚沼に帰って花の仕事をしようと決意させました。

 

山本

 

 

リース作りの楽しさは、素材をありのままに生かすこと

自宅兼用のアトリエを訪ねると、白い壁に包まれた室内には山本さんの作品がいくつか飾られていました。その中で目に留まったのは、野バラのリース。一見無造作につるを絡めただけのようでいて、素材の持つ自然な形と風合いを生かした姿にとても味わいがありました。「設計図を描いて作る工業製品のようなものは好きじゃないんです。素材となる草や花や木の、形や色をありのままに生かすこと。それがリース作りの楽しさだと思っています」。

山本さんのリース作りは材料を採ってくるところから始まります。市内には山本さんのお気に入りの場所があちこちにあり、折を見て出かけては季節の素材を探してきます。そのひとつに連れて行ってもらうと、小さな川沿いの緑濃い小道。「ホラ、これはアケビのつる、これが山芋のつる」。山本さんは道端に生い茂る草木の中から、お目当ての素材を見つけてハサミでどんどん刈り取って行きますが、素人目にはどれがリースに使えるものなのかさっぱり分かりません。「私もね、最初のうちはそうでした。何を採っていいか分からなくて、素材を買ってリースを作っていました」。豊かな自然が残る魚沼に戻って暮らす中、知り合った人たちからも教えてもらいながら、だんだんと自分なりに欲しい素材が見えてきたと話します。

 

山本
アトリエだけでなく、廊下や階段にはお気に入りの舟越桂の版画などと一緒に作品や素材が並んでいます。

山本
材料採集に同行しました。私たちには気づかない植物を宝物を集めるようにどんどん採取していました。

 

山本

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山本

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アトリエには、たくさんの作品が飾られています。その一つひとつにはよく見ると値札が付いています。アトリエはショップやワークショップの場所としても使われています。

 

 

教室でも見本はなし。形にとらわれず、自分の感覚で

“設計図のない”山本さんのリースの作り方は、教室で教える時も同じ。「生徒さんにどんな形にしたらいいですか?って聞かれても『テキトーに』って話してます(笑)」。見本を見せて、その通りに作るような教え方ではありません。形から入るのではなく、素材から入る。「自然の生み出した形を見て、素材がなりたい姿を形にしていくこと。作り手は手を貸すだけだと思っています」。自然の草木は1本として同じものはありません。無理に型にはめるのではなく、そのままを生かしていくことで「想像もつかないようなものに仕上がります」。

時にはアトリエを飛び出して屋外での教室も行います。山本さんが素材を採りに出かける場所へ生徒さんを連れ、与えられた素材ではなく、自分で素材を選ぶところから始めてもらうのです。「自分がきれいだなと思ったものを選んでもらって、自由に作ってもらいます。そうすると一人ひとりの持っている感覚が解放されて、すばらしいものができます」。

 

山本

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山本

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ワークショップはアトリエや出張会場で開催しています。これまでに多くの生徒さんが参加されました。

 

 

伝えたいことは「ありのままで」「ありのままに」

現在、教室はアトリエで行っているほか、新潟、長岡、三条、十日町、南魚沼の雑貨店やインテリアショップ、ギャラリーなどでも開催しています。山本さんが教室で教える際に話していることは、ひとつに「とらわれないこと」。形や答えを求める気持ちを解放し、素材と向き合い、無心に手を動かして形が生まれること。それが大切なのだと考えています。もうひとつは、「コントロールしようと思わないこと」。無理やり形にするのではなく、自然の素材に手を貸す感覚で作る。それが素材の持ち味が生きた作品につながります。

その意味で、子どもたちの発想にはいつも驚かされると言います。「数年前に子どもたちを対象としたクリスマスリースのワークショップを行っていましたが、教えるというより教わることのほうが多かったです」。素材を与えれば、子どもたちは自由に、思い思いにリースを作り「ほんとうにのびのびとした、すてきな作品に仕上がります」、と顔をほころばせます。

「とらわれないこと」「コントロールしないこと」。リース教室で話している2つのポイントの先に、山本さんがほんとうに伝えたいことがあります。それは「ありのままで」ということ。「リースの素材は自然の姿そのまま、作り手も自分が感じたことをそのまま形にして、楽しんで作ったらそれでいい。人の評価なんて気にしない。リースを作るひと時が、ありのままの自分を取り戻せる時間であってほしいと思って教室を続けています」。
ありのままの自分って何だろう。普段の生活では自分以外の目や意見を意識して、ともすると私たちは見失っているのかもしれません。山本さんは、「あなたがあなただからすばらしい」「あなたはあなたのままでいい」、リース作りを通してそれを伝えたいのだと話してくれました。

 

山本

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植生が豊かな魚沼は、作品作りの大切なパートナー

山本さんにとってリースとは? とたずねると「空気のような存在」、と答えてくれました。毎日絶対に作らなければならいなものではないし、かといって全く切り離した生活も考えられない。いつも傍らにあって、母親だったり、先生だったりといった役割を離れて、植物と遊べる楽しい時間を与えてくれる存在だと言います。

そんな気持ちになれたのも、『素の自分になれる』魚沼に戻り、豊かな自然の中でリース作りができるようになったから。「イギリスの園芸家が日本は植生が豊かで憧れると言ってました。雪も影響していると思いますが、魚沼はほんとに植物が豊かです。魚沼は私にとってベストな土地、作品作りの大切なパートナーだと思っています」。

最近は、草木を採るだけでなく、園芸もおもしろくなってきたという山本さん。「たぶんリースは作っていくと思いますが、今とは違う形で活動をしていくかもしれません」。魚沼で活動を続けてきたことで、また新たな“夢中スイッチ”がONになったようです。

 

山本

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写真

  1. ひと葉の2019年オリジナルカレンダー。
  2. 2014年、柏崎の古道具店coil4さんで開催した作品展の作品集「一本の木と波のうた」。HPから購入することができます。
  3. 娘さんが描いたリースのイラストをポストカードとして販売しています。
  4. ひと葉のロゴに使用されているイラストのオリジナル。娘さんが小学生のときに描かれた作品です。

 

アトリエひと葉
住所:〒946-0051 新潟県魚沼市今泉1137
TEL:090-3810-4947