魚沼の多彩な自然との触れ合い、その人なりの楽しみ方を提案したい

20歳を過ぎて知った自然の中に身を置くことの楽しさ。遅咲きのアウトドアマンは、自分が体験した自然のすばらしさを、さまざまな体験プランを通して、もっともっと多くの人に知って欲しいと活動を続けています。

 

角屋暢洋さん(特定非営利活動法人 スノーパーク小出 事務局長 専務理事)

 

INDEX

 

角屋

 

駅から徒歩10分、雄大な風景が広がる身近な自然体験フィールド

「すばらしい景色でしょう」。角屋さんの言葉に、取材陣一同、思わず頷き、感嘆の声が挙がります。案内されたのは小出スキー場の中腹、第一リフトの終点付近。眼下には佐梨川と魚野川をはさんで小出の市街地が広がり、その向こうには広大な魚沼平野。新潟が誇るブランド米、魚沼コシヒカリの一大産地です。さらに田園風景の先に目を向けると、緑豊かな山々が幾重にも連なっています。「秋は山並みが赤や黄色に色づいて、ほんとうに見事な景色が見られますよ」、と角屋さん。まさに一大パノラマ、絵に描いたような絶景とはこのことです。

角屋さんが勤務する小出スキー場へは、小出駅から徒歩10分。町の中心部から徒歩圏内でこれほど雄大な景色が望める場所は、県内でもそうそうありません。市民にとっては“裏山”の感覚。散歩やウォーキングのフィールドとして、もちろん冬はスキー場として愛されています。

 

角屋

 

 

「スノーパーク小出」は自然の楽しさを感じてもらう“入り口”

角屋さんは、小出スキー場を運営する「スノーパーク小出」の事務局長であり、専務理事。責任者として運営、管理全般に携わり、年間を通してさまざまなイベントや自然体験のプランニングを行っています。「小出スキー場は、小出公園の一角を占めていて、アクセスも良く、市内外の方が気軽に利用できる環境にあります。魚沼には魅力的な自然のフィールドがたくさんありますが、ここは自然に触れるきっかけになる場所。地域の方々が親しまれている場所だっていうことを強く感じますね。豊かな自然が残っている公園が身近にある。それを生かしていくのが私の役割だと思っています」。

市民に親しまれていることを如実に示している場所があると、角屋さんがスキー場のさらに上部へ案内してくれました。「地域の方が切り開いた遊歩道がいくつもあるんです」。もともとは中学生の散策用に作られたことがきっかけだったそうですが、その後、有志が次々と遊歩道を作り、今ではスキー場からさらに上部へ、また尾根伝いの本格的なルートまで、きちんと整備された多彩な遊歩道が作られています。「歩きやすい道がどんどんできて、私たちもびっくりするくらい。それも皆さん、まったくのボランティアなんです」。

このフィールドを愛する地域の人たちの思いに応えるためにも、角屋さんはより多くの人たちに楽しんでもらえるプランを作り、アピールしていきたいと話します。遊歩道を活用した自然観察会やトレッキング、子どもたち向けの自然体験活動、雪上運動会や和かんじき体験など、さまざまにアイデアを凝らしています。「子どもたちには、星空観察も好評です。ここは遮るものがないですし、満天の星空を見ることができます」。夜空にまたたく無数の星々。子どもたちが目を輝かせて眺める様子が目に浮かぶようです。明かりを避けて遠方へでかけなくても、すぐそこで楽しめる星空。スキー場という安全なフィールドであることも、子どもたちの自然体験にぴったりです。

 

角屋

角屋

角屋

角屋

角屋

角屋

 

写真

  1. 市民が切り開いた遊歩道。もちろん大家さんの許可を得て造成しています。この遊歩道は、小出駅近くまでつながっています。
  2. この遊歩道は、藤権現山山頂(233m)につながっています。
  3. 藤権現山頂には、市民が設置した鐘や祠があります。
  4. スキー場の山頂リフトにつながる遊歩道。取材中も市民の方が普段着でトレッキングを楽しんでいました。

 

 

スポーツは大の苦手、インドア派の子ども時代

今でこそ、プライベートでも登山や山スキーなどを満喫している角屋さんですが、子どもの頃はインドア派。「本が好きだったので、外に出るよりは家の中で本を読んだりして過ごしていることが多かったですね。スポーツも苦手で、小学校のときの通知表は体育が2でした(笑)」。そんな角屋さんがアウトドアの魅力にとりつかれてしまったのは? 「ギャップが大きかったので、逆に自然の中で遊ぶ楽しさに気がついたのかもしれません。スポーツが苦手だった僕にもできるんだと思ったこと。それが自信につながって、さらに引き込まれたのかも」。

角屋さんがアウトドアを楽しむようになったのは、20歳を過ぎてから。知り合いに誘われキャンプや登山に出かけるようになったことがきっかけでした。「自然に接すれば接するほどおもしろくなって、自然を大切にしなければっていう気持ちも高まっていきました」。高校を卒業後に入社した半導体工場を36歳で退職、子ども向けの自然体験教室を行っているNPOに参加。現在の職場に移ったのは6年前です。

 

角屋
遊歩道を使って、ノルディック・ウォークを開催。

 

 

ルールに縛られず、自分なりの自然の楽しみ方を

スノーパーク小出で、角屋さんはプランナーとしてのキャリアを確実に積み重ねてきました。プラン作りで大切なことは、「一番は安全の担保。特に子どもたちの場合には、大人と体力が違いますからそれを考慮しないと。同じコースを歩くのでも、子どもの歩幅だったらどうかといったことを考え、綿密にプランを立てます。その上で、参加者の一人ひとりにどのように自然に親しみ、楽しんでもらえるか」、そこがプランナーの腕の見せどころ。角屋さんが気をつけているのは、対象に応じて準備することだと言います。皆さんがアイデアを出して楽しめること。自然に触れて、参加者が魅力を感じてもらえるようなプランを立てています」。

理想は、自然散策をする場合、スタートとゴールを設定した上で、子どもたちに「安全に歩けるルートを考えよう」といったテーマを与えます。子どもたちはチームごとに意見を出し合うことで、自分たちなりに自然と向き合って、楽しみ方を考える。その過程はチームワークやチームビルディングを体験することにもつながると言います。職場以外に奥只見ネイチャーガイドとして尾瀬のガイドも務めている角屋さんですが、そのときも取り組み方は同じ。一方的に説明するのではなく、参加者の質問に答えるスタンスで臨んでいるそうです。

「人が作ったものには、“枠”がありますけど、自然はそうじゃない。自分が求めることに応えてくれるだけです。だから自然の楽しみ方は人それぞれ。人の数だけあると思います。今後はルールに縛られないプランを作っていきたい。例えば、ひとつのフィールドがあったとします。『ここで何かやってみましょう』。そんな提案から、参加者の方がコミュニケーションをとって、ぞれぞれに自然との関わりを体感して、楽しみ方を見つけてもらうようなプラン。難しいとは思いますが、実現したいですね」。

 

角屋真ん中に見える魚野川の手前がスキー場のスキーセンター。川の向こうが魚沼市内と右手奥が八海山。秋には山々は真っ赤に色づき、冬には一面真っ白な世界に変わります。このはっきりとした四季が、魚沼ですと角屋さん。

角屋

 

 

魚沼の魅力は、四季の濃さと選択肢の多い多彩なフィールド

魚沼で生まれ育ち、自然の魅力を伝えることを仕事に選んだ角屋さんにとって、魚沼はどんな風に映っているのでしょう。「ここほど四季が濃いところはないと思います。春、夏、秋、冬がハッキリしていて、メリハリがある。そういう環境だから、自然を楽しむにはうってつけのフィールドだと思っています」。さらに、多彩なフィールドがあることも魚沼の特長だと言います。「低山から2000メートル級の山までそろっているし、自然の表情も豊かです。奥只見に行ったら、次は越後駒ヶ岳に行ってみようとか、尾瀬に花を見に行こうとか、選択肢の広さはすごいと思います。コンパクトな中に、いろんな自然があって季節ごとの楽しみ方がある。アクセスもいいですしね。ここ(小出スキー場)から見える山なら、みんな日帰り圏内ですよ」。

ただ、偏った見方はしたくないとも言います。「あちこちに出かけてみると、周りにもすばらしいフィールドはたくさんあります。それを体験することで、改めて魚沼の良さに気づきます。それを多くの人に知ってもらえるようなプランを、地域の方々の意見も聞きながら考え、発信していきたいと思います」。

 

角屋

角屋

角屋

角屋

 

写真

  1. スノーシューで雪山散策。
  2. スキー場の一角を畑として利用。春は作付け、秋は収穫を楽しめます。
  3. 子供たちに好評な星空観察。満天の星空を楽しめます。
  4. 遊歩道を活用した自然観察会やトレッキング。

 

特定非営利活動法人 スノーパーク小出
住所:〒946-0043 新潟県魚沼市青島1609
TEL:025-792-5320 FAX : 025-795-6622
Facebook